蛍はゆらゆらと舞う。ぼんやり黄色に灯る点、点、点。蛍が舞うと初夏の始まり。たわわに実った梅を捥いだら梅仕事。梅干し、梅酒に梅シロップ。夏野菜の収穫も忙しい。ナスやトマト、オクラ…食べ切れない分は、お日さまに当てて干し野菜に。スクッと力強く伸びた稲に小さな白い花がビッシリ咲くのは八月初旬。この花が咲いたら「ちゃんとお米が実ります」のサインです。
そして八月中旬は、迎え火を焚いて、送り火でお見送りするまで三泊四日六食付でご先祖様がいらっしゃる一大行事「お盆」。鳴子のお盆は今でもお仏壇に野菜を飾り付けた『盆棚』を作り、花をあしらい、灯りを点けて、塗りのお膳に毎度メニューを替えて御供えするというおごそかな慣習がきちんと息づいています。好物が乗せられたお膳、決まってお線香を点けに来られる親戚の方々、送迎の火、思い出話。あまりにきちんと行われる様子を見てると「この地域の人達には今も本当にご先祖様が見えてるのでは?」と感じてしまうほど。
早朝の花立峠からは雲海。明けてくるとすーっと晴れて眼下に広がる鬼首の高原。八月下旬になると途端に大きくなる虫の声。
ウレシイ気持ち。カナシイ気持ち。ぐるぐると巡って巡る。一年の半分過ぎの折り返し地点。忙しい毎日をちょっとだけ閉じて静かな時間。鳴子の夏はココロの夏休み時間です。
鈴木美樹
宮城県・鳴子温泉郷在住。里山の自然、食、手仕事、暮らしを再発信する「さとのわ」を主宰。現代の都市生活者に向けて心と体を癒すプログラムを企画・運営している。
http://www.satonowa.com
これからの予定
8月「夏の保存食/ピーマン味噌作り」「手作りうどんの会」他
9月「荒雄川神社例大祭見学」「陶器作り入門湯治」他